中国・清末、キリスト教系出版社で出版を学んだ商務印書館の創業者2008年12月26日

 中国清末における民間の出版業の開始は、キリスト教系出版社で印刷技術を習得した中国人によるものだった。その一つ、中国で初めての中国人創設の民営出版社、商務印書館について見てみよう。

 商務印書館は1897年2月11日(光緒二十三年正月初十日)に創業した。商務印書館の創業者の一人、そして同社の経営者でもあった夏瑞芳は、ミッションスクール・長老会清心堂南市小学、清心書院の出身で、卒業後はキリスト教関連の出版社である英商『文匯報』で植字を学び、英商『字林西報』館で植字工、英文捷報館で職工長を務めた人物である。夏瑞芳を含め、商務印書館の創業者(出資者)は8名いるが、5名が長老会清心学堂で学び(5名という数字は楢本氏16-17頁の記述による。史春風氏は7名と記述)4名が英文捷報館や美華書館で(植字工だった者も)勤務した経験を持っている。彼等は信仰を同じくし、更に婚姻を通して血縁関係を結んでより強固な関係をつくっていた。

 そういえば、世に名高い宋姉妹の父親・宋耀如もアメリカで苦学をして大学の神学部をでて牧師になり、帰国後は聖書の印刷や出版の会社を立ち上げて財を築いた人物だ。中国・清末、中国の出版業は直接的間接的にキリスト教の宣教師によってもたらされた印刷技術の恩恵を受けていた。そして商務印書館の場合は、前述のように(当ブログ2008年8月4日参照)日本有数の教科書出版社であった金港堂と合弁することで、日本の優れた印刷技術、教科書編集と出版のノウハウを吸収し、この時期突出した発展を見せるのである。

参考:樽本照雄『初期商務印書館研究(増補版)』(清末小説研究会、2004)
史春風『商務印書館與近代文化』(北京大学出版社、2006、中国語)

なお、長老会の正式名称は、「American Presbyterian Mission, North」、中国名は「美国北長老会」である。

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