中国・清末、中国人初のアメリカ留学生の自叙伝『西学東漸記』2009年06月09日

中国人初のアメリカ留学生の自叙伝『西学東漸記』
 旅行中に容閎『西学東漸記』を読んだ。近代最も早い中国人のアメリカ留学生は、1847年にモリソン記念学校の校長ブラウンが帰国する際、アメリカ・マサチューセッツ州に連れ帰った3名、黄勝、黄寛、容閎であり、この本はその中の一人・容閎の自叙伝である。

 子ども時代から、ギャツラフ夫人の学校に入学した経緯、モリソン学校での生活、香港での学校生活、渡米、アメリカでの学生生活と彼を支えた人々との関係、帰国後の通訳、貿易商等としての活動、太平天国との関わり、曽国藩や丁日昌との関わり、アメリカへ児童留学生を送り込む計画と実行経緯と挫折、戊戌の政変によるアメリカ逃亡、孫文との関わり…概略は知っていたが、本人の言辞にはなんといっても説得力がある。尤も、誤認している部分や、偏った見方も散見されるが、これも当時の容閎の考えや置かれている立場等を考える参考になる。

 実はこのように余裕を持ってこの本を見ることが出来るのは、しっかりした注釈のおかげである。百瀬弘氏の訳は平易で読みやすい上、なんといっても注釈が素晴らしい。英文、中文の資料を駆使して、容閎自身が誤認している点を正し、時代背景等にも言及している。

 これを読んでやっと、19世紀のアメリカからの帰国者の中国近代化や政治、或いは革命運動への関わり方、思考といったもの、また一度アメリカを知った中国人の生国に対する見方や思いが分かってきた。東洋文庫におさめられている本は本当に素晴らしい内容のものが多く、いつも助けられている。本当にいい研究は古びることはないのだと思う。

読んだ本:容閎・著/百瀬弘・訳注/坂野正高・解説『西学東漸記』(東洋文庫、平凡社、1969年) 

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