水野直樹・藤永壮・駒込武 編『日本の植民地支配――肯定・賛美論を検証する』を読む2009年11月25日

 『日本の植民地支配――肯定・賛美論を検証する』を読んだ。一読して「模範回答集」だと思った。日本の植民地支配を肯定したり賛美したり言論には、いくつかのパターンがあり、その際よく挙げられる事例がある。これを20の質問にまとめ、それぞれの問題について、歴史研究者が具体的な論拠を示して答えるQ&Aで構成したのが本書である。

 質問は、例えば「近代的な教育の普及は日本の植民地支配の[功績]なのか?」「植民地支配は近代的な医療・衛生の発展に寄与したのか?」「植民地の工業化・インフラ整備は民衆生活を向上させたのか?」他にも朝鮮「併合」問題、慰安婦問題、朝鮮人と台湾人の志願兵問題、植民地支配に対する賠償・補償問題など、いずれも複雑な経緯や事情が絡んでいる微妙な問題である。

 これを第一線の歴史研究者が、歴史的事実を丁寧に積みあげて検証することで、日本統治時代を美化する見方の誤りを指摘する内容になっている。ただ、ブックレットだけに紙幅に限りがありすぎる。一つ一つの問題が、一冊のブックレット、あるいはそれ以上になる内容である。それをほんの2-3頁にまとめるのは、苦労したに違いない。これは模範回答集であって、より詳細な事実関係を理解してこそ価値がある。そのためにも、巻末掲載の引用・参考文献を参考にしたほうがいいだろう。

 ちなみにこのブックレットは図書館で借りたのだが、購入しようと調べたら、書店にも発行元にもなく、アマゾンに古本は出ていたが希少品扱いであった。

読んだ本:水野直樹・藤永壮・駒込武 編『日本の植民地支配――肯定・賛美論を検証する』 (岩波ブックレット、岩波書店、2001)

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