査建英「国家の敵」『火鍋子』vol.752010年06月09日

 『火鍋子』の最新号が届いた。査建英「国家の敵」が載っている雑誌だ。翻訳を頼まれて、年末からせっせと訳した作品である。訳していていろいろと勉強になった。査建英はかつて著書『八十年代訪談録』で80年代ブームの火付け役になった女性ジャーナリストであり、現代中国を分析する鋭い視点と文章力には定評がある。このエッセイ「国家の敵」は主に兄・査建国について書いたものだが、彼女らしい多面的な視点で現代中国の抱える問題を浮き彫りにしている。


 査建国は中国初めての野党・民主党の結成に関わり国家転覆罪により9年の懲役刑に処され、1999年から2008年まで投獄されていた人物である。妹の目から見た、兄の生い立ちから、文化大革命のときに紅衛兵のリーダーとなり内モンゴルに下放した経緯、北京に戻ってからの生活、野党結成という「大業」に関わったきっかけ、投獄された兄を監獄に訪ね面会したときの様子が綴られる。中でも興味深いのは、彼女のいずれも各界の第一線で活躍する友人等の様々な見方、忠告の数々である。それは過激でなく、むしろ慎重で冷静な意見が多い。


 経済発展がとかく注目される中国であるが、内側からしか見えない中国のもう一つの姿が、新進気鋭のジャーナリストの目を通して見えてくる。現代中国を読み解く鍵のひとつがそこにはある、と思う。

 

翻訳:査建英「国家の敵」『火鍋子』vol.75(20105月)

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