言語を超えた世代の台湾詩人・錦連さん2010年12月08日

台湾の詩人・錦連さんより全集が届いた。中国語の詩が4冊、日本語の詩が4冊、翻訳が2冊、小説が1冊、散文(1949年の日記も)が1冊、資料が1冊の合計13冊である。

全集に収められた詩の内、日本語の創作が半分を占め、翻訳もあるのは、錦連さんが台湾で「言語を超えた世代」に属する詩人だからである。1928年12月に日本統治下の台湾で生まれた錦連さんにとって、日本語は中国語よりも先に獲得した創作言語であり、中国語は戦後に苦労して習得した創作言語であった。

 錦連さんは戦前戦後にかけて台湾中部で活動していた銀鈴会の同人で、中国語一色となった戦後の台湾文壇においても言語の壁を克服し中国語で作品を発表していた笠詩社の発起人のおひとりでもある。同世代の詩人と比べ少し異色なのは、台湾の彰化駅の電信室に長年お勤めだったことだ。

 二つの言語の狭間で、繊細な感受性と鋭い観察力で綴られた詩、日記、雑文…
全集には、錦連さんの半世紀以上の歴史と心がぎっしり詰まっている。この機会に丁寧に時間をかけて読んでみたいと思う。