『チャイナ・ドリーム-世界最大の市場に魅せられた企業家達の挫折』(上)を読む12011年09月21日

 娘の夏休みが終わり、やっと時間が出来て、ジョー・スタッドウェル『チャイナ・ドリーム-世界最大の市場に魅せられた企業家達の挫折』を読んでいます。この本の著者はジャーナリスト、欧米的な価値観でみる中国と中国市場は、我々の従来の中国像とは、全く違うことに気づかされます。

 その意味で、私にとって特に興味深かったのは第一章「歴史を貫く夢」でした。日本人は黒船から始まる近代の記憶があるだけに、中国人の近代における欧米列強への被害意識に共鳴する面がありますけれど、『チャイナ・ドリーム』冒頭にみる欧米の中国進出の歴史は、黄金の眠る別世界に挑む冒険家の一代記のようです。


 第二章は、改革開放を演出した鄧小平について、第三章以降は前世代でなしえなかった巨大市場中国への進出を目指し、新たなる冒険を開始した企業家達の挑戦の軌跡です。10億人以上の人口を有する中国は、他とは比べものにならない巨大な市場であり、それゆえに経済開放政策が始まると、国内外の企業家が「チャイナ・ドリーム」に資金と精神力と時間を惜しげも無くつぎ込んできました。この本には欧米諸国の企業家に限らず、国を挙げて中国進出をバックアップした例、日本、台湾と香港、東南アジアの華人企業家も登場します。しかしながら、真に成功を勝ち得たのはごく僅かだといいます。沢山の実例が挙げてあるので、世界に名だたる多くの大企業家による中国市場への挑戦と挫折の経緯が分かります。

 考えられるあらゆる手を打ち、国を動かし、マスコミ向けには成功を演出していても、中国国内と競合しない分野や輸出業等ごく一部の例外を除けば、ほとんどが投資に見合った成功を収めていないというのです。なぜそんなことになったのでしょう。以降下巻の感想で。

読んだ本:
ジョー・スタッドウェル 著/鬼沢忍・伊東奈美子 訳『チャイナ・ドリーム-世界最大の市場に魅せられた企業家達の挫折』(上)(早川書房、2003年)
参考:
ジョー・スタッドウェル氏のブログ http://joestudwell.com/