国旗強奪事件に思う ― 2012年09月03日
この事件が反日という名目があれば、どこまで出来るか、というギリギリのところを見極めての計画的行動だとしたら、これが今後の更なる苛烈な行動の試金石であるとすれば、非常に怖いことだ。
最近の日中関係はとても心配である。友好の気持ちをもっている者にとっては実に胸が痛い。かつての両国間の悲劇が繰りかえされることのないよう、できることはないか考えたい。
中国の愛国教育 ― 2012年09月04日
一連の反日行動と愛国教育に大きな関連がある、とマスコミが報じ、1994年8月の「愛国主義教育実施要項」以来、愛国教育が強化されたとしている。しかし、私はむしろ、内容が強化されたというよりは、整備されたに過ぎないと考えている。
それというのも、中華人民共和国建国以来の情況からみれば…かつては全ての教科が愛国教育に彩られていたのであり…現在の愛国教育が占める比重が大きいわけではなく、内容的に大きな変更があったようにも見えないからである。
中国の教科書を研究してきた立場からいえば、反日的要素に限ってみても、以前の方がずっと苛烈で、かつ直接的だった。建国直後の教科書は日中戦争の直後ということもあり、戦時の反日教材がそのまま使われている例も少なくなかったし、比較的穏便になった80年代の教科書でさえ、日本軍と戦って犠牲になった烈士のエピソードが沢山収録されていた。そうした教材の数はいまの方がずっと少ない。そのような情況にもかかわらず、八十後や九十後の若いネットユーザーの間でも反日感情が吹き出す理由が、何かありそうだ。
中国の憲法、教育法における愛国主義教育の規定 ― 2012年09月28日
尖閣問題をきっかけに、中国における反日デモが激化、日本中が震撼した。過激なデモと沸騰する中国の反日世論、その根底には愛国主義教育の影響がある、と多くの識者が分析している。ただ、その仕組みについては、磨りガラスから中を覗くような、ぼんやりとした像しか見えていないのが現状である。
見えるところもある。中国の愛国主義教育については、憲法や教育法でその理念を知ることが出来る。一九八二年施行の憲法の第二四条二項には「国家は祖国、人民、労働、科学、社会主義の功徳を愛することを提唱し、人民の間で愛国主義、集団主義、国際主義の教育を行い、弁証法的唯物主義と歴史唯物主義の教育を進め、資本主義や封建主義その他の腐敗した思想に反対する」と規定され、一九九五年施行の教育法は第六条で「国家は教育を受ける者に、愛国主義、集体主義、社会主義的教育を行い、理想、道徳、規律、法制、国防と民族団結の教育を行わなければならない」と定めている。
これを見ると、中国の愛国主義教育はあくまで国策に沿った愛国的な国民を育てるのが目的であるようだ。愛国教育は程度の差こそあれ、多くの国で行われている。問題は中国の愛国者を育てるべき教育が、なぜ反日感情を生むのか、である。それについては、愛国主義教育実施綱要がヒントを与えてくれる。
愛国主義教育実施綱要の中身1-前文と第一章 ― 2012年09月30日
中国は尖閣問題を国連に持ち込んだ。二国間ならともかく、国連で中国流が通用するのだろうか。いずれにしても、国際社会の良識がこの問題に解決の糸口を与えてくれると信じたいところである。
さて、「愛国主義教育実施綱要」である。前文と八章四〇条からなるこの綱要は、一九九四年に施行された。重要と思われる部分について抜粋してみよう。
まず、前文の冒頭には「中華民族は愛国主義の輝かしい伝統を持つ偉大なる民族である。愛国主義は中国人民が団結奮闘するにあたり、それを動員し鼓舞するための旗印であり、我が国の社会の歴史的前進を推し進めるための大きな力であり、各民族人民の共通する精神的支柱である。」とあり、中華民族の誇りと愛国主義教育の重要性が唱われている。
次に第一章「愛国主義教育の基本原則」について、この章の特徴は「鄧小平同志」が度々登場する点である。「愛国主義教育は鄧小平同志が建設した中国の特色有る社会主義理論と党の基本路線の指導に基づかなくてはならず、社会主義現代化建設の促進と改革開放、国家と民族の名誉・尊厳・団結・利益、祖国統一事業にとって有益でなくてはならない。」(一条)、「鄧小平同志の愛国主義に関する一連の重要な論述に基づいて、愛国主義教育の理論、教材、制度、基地を作り上げなくてはならない。」(三条)とあるように、愛国主義教育の基本思想が鄧小平の愛国主義関連の論述であることが、ここから見て取れる。
更に少々意外なのは、「愛国主義教育は対外開放の原則を堅持しなければならない。愛国主義は決して狭隘な民族主義ではなく、中華民族の優良な成果を継承し発揚し、資本主義先進国家をも含むあらゆる文明の成果をも学び吸収すべきである。それでこそ、中国人民は各国民と共に世界の平和と人類の進歩に貢献できる。」(四条)とあることである。文字通り受け取るなら、中国の愛国主義は偏狭であってはならず、世界平和貢献が出来る人材教育を目指したものということになる。
第二章「愛国主義教育の主な内容」は重要なので次回に回すとしよう。(2012年10月1日改訂)
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