若冲という名前にみる大典大師の慧眼2016年06月11日

 相国寺では6月14日まで伊藤若冲生誕三百年を記念して、若冲が弟二人の供養と自身の永代供養のために1765年に寄進した釈迦・文殊・普賢の3副と動植綵絵30副(複製)を公開しています。
 相国寺第113世住職・梅荘顕常(ばいそうけんじょう・大典大師とも)と伊藤若冲の縁は深く、若冲を人間として絵師として高く評価し将来性を見いだしたのも、「若冲」の名をつけたのも梅荘顕常です。
 「若冲」は『老子』の第四十五章「大成若缺 其用不弊 大盈若冲 其用不窮 大直若屈 大巧若拙」の部分から取ったと言います。「伊藤若冲の「冲」字考」の訳によればこんな意味です。「本当に完成しているものは、どこか欠けているように見えるが、いくら使ってもくたびれがこない。本当に満ち充実しているものは、一見、無内容(からっぽ)に見えるが、いくら使っても無限の効用をもつ。真の意味で真っ直(す)ぐなものは、かえって曲がりくねって見え、本当の上手はかえって下手くそに見える。」
 伊藤若冲生誕300年の今日、若冲の作品を見ても全く古びていないのを見ると、この名をつけたという梅荘顕常の慧眼に敬服せざるを得ません。