台湾の歴史教科書の綱要改訂の向かうところ(1) ― 2014年02月07日
台湾の高級中学(高校に当たる)の歴史教科書の綱要が春節直前の1月27日に改訂されたというブログ記事「日本統治の“植民地”的性格を強調、台湾高校歴史教科書綱要の「反日」的改定とその背景」を読んだ。同記事によれば「反日シフトかと思われた方もいるかもしれないが、実は日本がメインの話ではない。つまり、反日か否かではなく、台湾はさまざまなルーツの人々がやってきて作り上げてきた「多元的地域」なのか、それとも「中国の一部」なのか、という対立」であるという。どうもピンと来ない。
こういうときは自分で調べるのが一番である。早速、中華民国教育部のHPを確認した。すると、1月27日付の「普通高級中学国文と社会領域課程綱要の微調整の説明」が見つかった。そして、これを手がかりに1月16日に行われた公聴会の資料を見つけることができた。「普通高級中学国文及び社会領域課程綱要の微調整公聴会資料2014 01」である。
長文の資料なので全部見るのは大変だが、そこまでは必要ないだろう。台湾史の部分に絞って見てみた。漢人が台湾に渡った経緯、宋、元との関わり、オランダ統治下、明初期の鄭氏、開港前までの清の統治、列強による通商と宣教等、日本統治下に入る前の台湾について多く加筆されている。また日清戦争から辛亥革命と台湾人士との関わりなど、大陸との関係が添加されている。日本に関わりがあるのは、日本統治下の台湾において日本がインフラ設備等を整えた理由を、日本人が日本の利益のために行っただけだと断じているところである。
私が見るところ、この変更により、台湾と中国大陸の歴史的結びつきが大幅に加筆誇張されることで、台湾における日本統治時代の日本の影響が矮小化されている。また結果として、台湾史が被主体的に記述される部分が増えたことで、改訂前と比べて台湾史の主体性が大きく低下したような印象を受ける。(つづく)
台湾ドラマ「蘭陵王」に見る文化の還流 ― 2013年09月25日
台風で家に閉じ込もっていた連休、中国と台湾で人気の台湾ドラマ『蘭陵王』を見た。『蘭陵王』は約1400年以上前の中国南北朝の時代を舞台にした歴史劇で、出演者の顔ぶれを見ると、高長恭=蘭陵王役は上海出身の馮紹峰=ウィリアム・フォン、天女・楊雪舞役は台湾出身の林依晨=アリエル・リン、宇文邕=北周武帝役は香港出身の陳暁東=ダニエル・チャン、といずれも眉目秀麗なトレンディードラマ的俳優陣である。髪型や衣装、背景に現代風なセンスがちりばめられ、目を引く色使いも特徴的で美しい。よく見ると、ポスターなどを手がけたのは日本人の写真家・蜷川実花、なるほど、彼女らしい色使いである。正直なところ、歴史劇としてはところどころ怪しい部分があるが、そこはそれ、トレンディードラマの一種と思えば、見目麗しいのは悪くない。なんといっても蘭陵王は史書・北斉書に「貌柔心壮、音容兼美(顔は優しく心は勇ましく、声も姿も美しかった)」と記されるほどの、味方が見とれて士気が下がるのでわざわざ面を着けて出陣したという美男子だから、その周囲を取り巻くのも、美しい方が似合っている。
台湾ドラマ『蘭陵王』は2013年8月中旬に中国で、下旬に台湾で放送開始、つい先ごろ台湾で最終回が放送されたところで大人気を博している。すでに日本と韓国の会社が180万ドルで版権を購入したというから、日本でもしばらくしたらどこかのチャンネルで放送が始まるだろう。
しかしながら、『蘭陵王』が日本で放送されれば、一騒動起こる可能性大である。見ていて気づいたのだが、ストーリーの重要な部分が各処で日本の少女漫画『王家の紋章』(細川智栄子あんど芙〜みん・秋田書店、中国語のタイトルでは『尼羅河女兒』)によく似ている。気になって調べると、台湾では放送開始とともに『王家の紋章』ファンが気づいて、ブログ等で検証してみせ、ニュースにも採り上げられている。似ているところが一つ二つではないので、偶然に印象に残っていたストーリーを使ってしまったと好意的に捉えるのは少々無理がありそうだ。できれば放送前に手を打ったほうがいいのでは、と思う。
さて、これを著作権的に見れば大いに問題である。しかし、偶然「蘭陵王」だったことを踏まえ、日中文化の往来という視点で見ると、興味深い一面もある。「蘭陵王」は日本で千年以上もの長きにわたって寺社と宮中で伝えられてきた雅楽の名曲である。伝わった当初の形のままではないらしいが、管弦と舞曲の両方が伝えられ、いまでも上演機会が多い舞楽の一つである。この「蘭陵王」は中国・唐朝において、酒席でよく舞われたそうだが、晩唐の頃には失われてしまった。玄宗皇帝のとき何かの理由で禁止されたのが絶えたきっかけだったようである。
その「蘭陵王」を日本に伝えたのは、736年(天平8年)にインド僧・菩提僊那と唐僧・道璿らと共に渡来した林邑国フエ(いまのベトナム)出身の僧侶・仏哲である。仏哲が伝えた舞曲は「林邑八楽」と呼ばれる、中国から林邑国に伝わった雅楽の一種であった。唐、ベトナムを経て日本に伝わる中で変化はあったに違いない。それでも、本国で絶えた後も、他の文化圏で消えたあとも、日本で当初の面影を残しながら、1200年以上の長い歳月、生きた文化として面々と受け継がれてきたのは奇跡的と言っても良いだろう。
ここに中国と日本、或いは他の周辺国との不思議な関係に気づかされる。実はこうした例は歴史上繰り返し起きている。中国本国では目録に書名だけがのこる古医学書が、日本で多く発見されているのをご存知だろうか。このような中国の文化が日本に於いて保存され、後に中国に還流した例は非常に多い。中国では王朝交代における破壊や権力者の方針や都合による言論統制等で、大きな力が働き、そのたびに多くの記録や文化が失われてしまう。そのとき周辺国の役割は重要である。その中で海を隔てている日本は少し特殊な存在かもしれない。海を隔てている故に、やっと入ってきた文化がより貴重であるからこそ、他の周辺国以上に文化を出来るだけオリジナルに近い形で保存する習性が生まれ、中国の文化のいわば冷凍庫のような役割を果たしてきたような気がする。いや、古書については冷凍庫でいいとしても、蘭陵王の舞楽については生きた文化として1200年引き継がれてきた。文化を引き継ぐのは大きな努力を必要とするものだ。どれほどの人間が関わってきたかを想像するだけで気が遠くなる。日本文化の中に組み込まれてきた多くの外来文化のあり方を考えると、実に面白い。
近年においても、中国は文化大革命という文化の大破壊を経験した。文革で傷つき、多くのものを失った中国に、ごく短期間に多くの文化が還流した。台湾、香港、日本、韓国、ベトナムなどの周辺国の存在なくして、文革後の短期間の文化復興はあり得なかったであろう。しかし、こうした文化還流の現象は、一時的には認識されるが、すぐに忘れられてしまうのは残念なことである。まるでずっと途切れなくそこの存在したものであるかのような錯覚を持ってしまう。その結果、還流した文化はすでにオリジナルではなくなっていることを見逃しがちになる。日本や韓国や台湾やベトナムを経たことで、各文化圏の価値観や文化的要素が付け加わり或いは何かが削られて還流しているのである。舞楽「蘭陵王」にしても、1200年を経る内には、オリジナルの面影を残しているとはいわれても、やはりそれなりには変化している。今回の台湾ドラマ『蘭陵王』もわかりやすい例の一つと言って良いかもしれない。台湾でいつのまにか『蘭陵王』の物語に日本の人気少女漫画の要素やら他のものが付け加えられて、中国に還流したと考えたら興味深い。でもいまはグローバル化の時代、還流の方法も現代のルールが適用されるべきだと思う。(2013.9.30改訂)
参考:台湾のニュース映像(YouTube)蘭陵王編劇MIT 中國版 尼羅河女兒
中国に還流した日本所伝の中国古医籍
二つの卒業生に贈る言葉 ― 2013年06月16日
秋入学の国では、ちょうど今頃が卒業の時期です。曾てスティーブ・ジョブスがスタンフォード大学で卒業生に贈ったスピーチには感動しました。「…人生には頭をレンガで殴られるような出来事が誰にでもあります。
これを久し振りにYouTubeで見ていて思いだしたのが、以前話題になっていた中国の政法大学法学院の卒業
両方とも素晴らしいスピーチですが、前者の高邁な内容と比べ、後者が置かれている現実のなんと厳しいことか。考えさせられます。
参考:
YOUTUBE「スティーブ・ジョブズ 日本語で学ぶ伝説のスピーチ(字幕)」
KINBRICKS NOW「革命歌を歌うよう強制されるのに革命は禁止……でたらめな時代を生きる新卒生に贈る言葉―中国」
明日は旧暦五月五日、端午の節句ですね~ ― 2013年06月11日
御無沙汰しています。
明日は旧暦の五月五日、端午の節句です。昔は端午の節句を迎えると冬の服を仕舞い込んで、衣替えしたそうです。そして中国や台湾では匂い袋を首から提げたり、菖蒲を軒先に飾ったり…そうそう、屈原の故事にちなんでチマキを食べます。今日、友達からこんな可愛いメールが届いたので紹介したくなりました。
讓開 讓開(どいてどいて)
╭══╮
╭╯ΘΘ ║
╰⊙═⊙╯ 送粽子來啦!(チマキを持って来たよ~!)
含量成分:100%純關心(成分は100%の真心)
配 料:(材料)
第一層是祝福(一層目は祝福)
第二層是關懷(二層目は思いやり)
第三層是相信(三層目は信頼)
第四層是溫馨(四層目はぬくもり)
以互相包容造餡(餡は互いに受け入れ合う心)
中間是真緻的友誼(真ん中には本物の友情)
保存期限:一輩子(保存期間:一生)
保存方法:珍惜自會長久(保存方法:大事にすれば長~く保ちます)
衷心祝您端午節快樂!!(端午の節句を楽しんでね)
艾未未主編の『NewStatesman』中国語版『新政治家』を読む ― 2012年10月24日
艾未未、AiWeiwei(アイ・ウェイウェイ)の中国語読みで国際的に著名な現代美術家である。元々辛口な批評で話題を呼んでいたが、四川大地震の手抜き工事の調査と被害者名簿作成に伴う活動以来、体制批判でも知られるようになった。その彼が客席編集長として、一期限り、政治を中心としたリベラルなイギリスの雑誌 『NewStatesman』の編集長を任された。十月二十日に英文版の雑誌は発行されたが、中国関連の記事のみ集めた六十頁ほどの中国語版『新政治家』はネットで読めると知り、早速読んでみた。
冒頭、「中国は自身を識るべきだ」の大見出しに目を惹かれた。 内容は、抗議の焼身自殺が続き出入りが厳しく管理されるチベットの現状、人権弁護士が語る不公正な裁判や冤罪の多さ及びそれらの裁判に関わった弁護人への仕打ち、インターネット上の監視、都市の美観のために犠牲にされた民家の写真、先日亡命した盲目の人権活動家陳光誠インタビュー、インターネットの世論操作等を専門に行っている「五毛党員」へのインタビュー、艾未未の妻・路青の会社が脱税で検挙され多額の罰金を払わされた脱税裁判などに焦点を当てている。
なかなか強烈な内容だった。何れの記事も当事者でなければ分からない詳細な情報、苦しみと怒りに溢れている。中国の裏側を、西側メディアを使って周知する。一期限りの編集長は誌面の全てをそれにかけている。果たして彼が求める反響は得られるのだろうか?(2012年10月26日改訂)
参考:Wikipedia艾未未http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%89%BE%E6%9C%AA%E6%9C%AA
艾未未主編『NewStatesman』の中国語版『新政治家』 http://www.newstatesman.com/sites/default/files/files/AWW%20New%20Statesman.pdf
『NewStatesman』英語版はこちら http://www.newstatesman.com/
「四川大地震の手抜き工事を調査した人達に起きていること」(本ブログ2010年1月25日記事) http://youmei.asablo.jp/blog/2010/01/25/4837437
来年秋の中国の地理教科書は「釣魚島」で修訂!? ― 2012年10月21日
今回の尖閣問題の日中間の紛糾は、中国の地理教育にも影響を及ぼすことになるかもしれない。中国のマスコミ各社は、来年秋の中学二年の地理教科書(人民教育出版社版)の修訂の可能性を伝えている。修訂内容は「釣魚島」、つまり尖閣諸島についてである。
修訂される前に現行の地理教科書における「釣魚島」の記述をおさえておこう。現在でも「釣魚島」に関する記述は地理教科書に存在する。でもそれは、地図に表示され、「祖国の神聖なる領土-台湾省」の単元で二回登場する程度の小さい扱いに過ぎない。授業の内容の重点も完全に台湾にある。
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祖国の神聖なる領土-台湾省
台湾省は台湾島、及び附近の澎湖諸島、釣魚島等の多くの小さな島を含み、総面積約36000平方キロメートル、人口2200万強である。台湾島は我が国最大の島である。北は東海(訳者註:東シナ海)、東は太平洋、南は南海(訳者註:南シナ海)に臨み、西は台湾海峡で福建省と隔てられ向き合っている。
台湾は祖国の神聖にして不可分な領土であり、台湾の人民は我々の血を分けた同胞である。台湾と祖国大陸の統一の実現は、海峡両岸の人民の共通の願いである。
(図6.22 台湾省)
練習
図6.22を見て、台湾省の位置と範囲を理解しましょう。
(1) 台湾島、澎湖列島、釣魚島を探しましょう。
(2) 台湾島周囲の海洋と海峡を探しましょう。
(3) 比例尺を利用して、基隆――福州、高尾――厦門の直線距離を計算してみましょう。
修訂については、記事にも言及されているが、外交にも関わる敏感問題だけに、人民教育出版社としては上の指示を仰ぐことになる。
現在、中国の教科書は検定制になっているとはいえ、かつては国家共通教科書の担い手であり、今でも全国的に圧倒的なシェアを誇る人民教育出版社の修訂が行われれば他に与える影響は大きいはずである。
(このブログ記事の読者より、人民教育出版社が釣魚島に関連する地理教科書修訂を否定した報道についてご教示いただいた。今後の動向を見守りたい。2013年月2月7日改訂)
参考:「初中地理修訂或細化釣魚島内容・明年秋季進課堂」(中国新聞網、2012年9月14日) http://www.chinanews.com/edu/2012/09-14/4182549.shtml
「
人教社否認將細化初中地理教材中關於釣魚島的內容」(鳳凰網、2012年9月14日)
『義務教育課程標準実験教科書 地理』八年級下冊 (2006年10月第3版、人民教育出版社)


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二〇一二年新学期、中国の一部小中学校に本格導入された国防教育(訂正) ― 2012年10月17日
今年九月の新学期から、中国の北京市や河北省等一部の省市の小中学校に「国防教育課」(以下、国防課)なる新しい科目が新設された。まだ調べ始めたところで、よく分からないが、二〇〇一年あたりから一部の小中学校で実験的に導入して準備が着々と行われていた模様だ。授業時間は小学校が毎学期(前後期二学期制が一般的、一部に三学期制も)四時限分、中学校が五時限分を国防教育の授業にあてることになっている。なお、国防課を教えるのは思想品徳、歴史、国語の教師らしい。(中国の小中学校は一般的に教科担任制)
でも、小学生に国防教育って?国防課って一体どんな内容なのだろう。ヒントを探していたら、国防教育を他に先駈けて行っていたらしき小学校の教師のブログを見つけた。そこで国防課の小学校一、二年生の授業計画(二〇一〇年の内容)をちょこっと覗いてみることにした。
まずは小学一年生から。この授業計画では、一年生の国防教育は後期から始まる。まず国歌、国旗歌、共産児童団歌、校歌を学び、学校で毎日行われる国旗掲揚式の手順と守るべき規則を身につける。子供達は国旗と国章に敬意をもつことをこの時期に学ぶのである。日中戦争の映画「小兵張嘎」(作家・徐光耀の作品を改編)、日中戦争期の児童団員の活躍を描いたという「紅孩子」(未見)なども見ることになっている。
二年生になると内容は格段に増える。映画「閃閃的紅星」(ピカピカの赤い星、といった意味)、映画「劉胡蘭」と毛沢東の題辞、小英雄「雨来」の話から日中戦争について学ぶ。「閃閃的紅星」は地主にいじめ抜かれた村を紅軍が解放するお話だったように記憶しているので、紅軍の活躍がメインかもしれない。劉胡蘭は実在の女性の共産党員で国民政府に捕らえられ処刑された人物であり、最期まで投降せず、その気高さを毛沢東が讃えた題辞が有名である。「雨来」は日中戦争期、凶暴な日本軍人に村が襲われるが、酷い目に遭っても口を割らず、連絡員を守り、自分も得意な泳ぎを生かして難を逃れる話である。ちなみに雨来は実在の人物ではなく、作家・菅樺が書いたお話である。「劉胡蘭」「雨来」の教材はいずれも一九八〇年代の教科書に収録されている。他にも、人民解放軍の構造や役割と貢献、孫子の兵法、そしてここで最初に国防とはなにかを学ぶ。国防を学ぶ導入として、意外にも映画「007」が例に採られ、スパイとは何かを教えている。とにもかくにも、非常に盛りだくさんのメニューになっている。
ここまで見て気がついた。これはどうやら実験段階の授業計画で、内容が多すぎる。規定の時間ではとても終わらないだろう。現行の教科書と同じ内容ではないかもしれない。それでもやりたいことは全部入っているようにみえるから、参考にはなると思う。それから、もう一つ、かつて国語教科書に載っていた国民政府関連の教材はこちらに移されたのかもしれない。これはぜひ検証したい。できることなら国防課の教科書を見てみたいものだ。
国防教育は一九八〇年代後半には大学レベルで軍事訓練等の導入が行われている。しかし国防教育が系統的に教育システムに組み込まれ、小中高大の全ての段階で義務化されるようになるのは、冷戦崩壊という外部環境の「深刻化」という背景が契機となり、一九九三年から九四年にかけて「国防教育法」が起草制定されて以降のことである。鄧小平は「国防教育は赤ん坊のときから始めよ」と述べた。でも、実際に青少年全体に国防教育を行き渡らせるための行動を起こしたのは江沢民である。江沢民は「国防教育を思想教育の総体系に組み入れよ」と題する論文を一九八八年十月二十五日の『解放軍報』に寄稿し、その後の一九九四年の国防教育法の制定他を主導している。今回の国防課の新設もその流れの一環とみて良いだろう。(2013年4月3日改訂。)
(ブログ読者より「国防課の開設は全国一斉ではなく一部省市では」とのご指摘をいただき、確認の上訂正しました。間違った記事によりご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。)
参考:2010-04-21 | 一年国防教案(張暁春老師的網校Officeより)
弓野正宏「中国「国防教育法」の制定と施行--軍民関係制度化の意義と限界--」(早稲田大学リポジトリ)
http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/30584/1/SeijiKeizaigaku_369_00_005_YUMINO.pdf
台湾に友好的な教材の出現――中国の国語教科書 ― 2012年10月13日
中国の国語教科書に近年、台湾に友好的な教材が収録されるようになった。現行の人民教育出版社版の教科書では「雪を見る」(二年級・上冊)、「海峡を越えた生命の橋」(四年級・上冊)、「忘れられない授業」(五年級・上冊)などがそれに当たる。これは大きな変化である。胡錦濤国家主席の中台平和統一路線を反映している、と考えられる。
では収録されているのはどんな教材か、この中から小学校二年生向けの教材「雪を見る」を紹介しよう。こんなお話しである。台湾の子供が商店に飾られていた雪の風景を見て、先生に「先生はホンモノの雪を見たことはありますか」と尋ねる。先生は「子供の頃、ふるさとでね。」と地図で北京を指さして答える。「北京はここから遠いでしょう?」と子供が聞くと、「そんなに遠くないわよ。」と、子供の頃、雪で遊んだ様子を語って聞かせる。雪だるまを作ったり、雪合戦をしたり…子供達が「いつ私達を北京に連れて行って本当の雪を見せてくれるんですか?」尋ねると、先生は「あちらの子供達もあなた達と一緒に遊ぶのをとても楽しみにしているのよ。」と答える。
この作品、一見すると、台湾の子供達が北京の雪景色に思いを馳せる、という心温まる話である。これを読んだ中国の子供達は台湾の子供達と雪で遊ぶ様子を想像して、親しみを持つだろう。また、先生が北京出身であることから、教室で中国と台湾の関係を学ぶ機会ともなり、そして台湾の人々がこの先生のように統一を願っている、と子供達は自然に信じるだろう。こういう教材を低学年に持ってきて、台湾への親近感を醸成している、と見ることが出来るだろう。
この教材は政治的な部分を上手く包んで、子供達の興味を引いているが、隠すのに苦労している部分もあるようだ。例えば、先生の台詞には「北京」という言葉がなく、地図で北京の場所を示すという行為に置き換えられている。これは台湾では正式には今でも北京は「北平」、首都は南京のままだからであろう。他にも、近年の教科書の欄外には大抵作品の出典が書かれるのだが、この作品には書かれていないのが気になる。ついでにいえば、北京の冬、雪はあまり降らない。滅多に積雪もない。何年ぶりかの大雪で二、三十センチ積もっても、雪はサラサラのパウダースノーで雪だるまなんてつくるのはとっても大変で、雪玉もすぐ崩れるから雪合戦も難しいと思う。従ってイラストのような雪遊びは、ほとんど見られない。こうして見ると、この先生、北京出身というには少々無理がある。恐らく…台湾人が「本当の雪を見てみたい」というのを聞いて、それをヒントに、北京をよく知らない作者が書いたのだろう。いずれにしても、慌てて作った教材という感じは否めない。(2012年10月15日改訂)

二種類の愛国「暴力“礙”国」と「理性愛国」 ― 2012年10月11日
中国の最高国家行政機関である国務院直属の通信社、新華網が配信した記事に載っていた漫画を紹介しよう。ここには二種類の愛国の姿「暴力“礙”国」と「理性愛国」が描かれている。
まず、赤い方のタイトルは「暴力“礙”国」、暴力が国にとって害であるという意味を込めて、「愛」と同じ音の「礙」を使っている。イラストの文字は「礙」の簡体字であり、「妨げる、邪魔になる」の意味である。イラストを見ると、凶悪な表情の牙と角を生やした人々が目に入る。一コマ目は日本食レストランを破壊したり食い逃げしたりしている人達、二コマ目が中国にいる日本人を追いかけて暴力を振るっている人達、三つ目は日本車に乗った中国人を襲って車を壊している人達、四コマ目は日本製品を買わないようスーパー入り口で見張っている人達、五コマ目は日系店舗への略奪放火行為、六コマ目はウェブ上で流言やデマをまき散らす人が描かれている。かなり怖いイラストである。

次に青い方のタイトルは「理性愛国」、理性的に国を愛そう、である。一コマ目は国旗付きの建物(現政府のことだろう)を大切に掲げて政府の外交活動を擁護せよと述べ、二コマ目は法律書のイラストで法律を守って同胞の財産を尊重せよと示唆し、そして三コマ目はより広く同胞が団結し愛国の情熱を正しく表現し、国家の主権を護り領土の保全に務めよう、とあり横断幕を掲げてマナー良くデモ行進する様子を描き、四コマ目は果樹に水をあげる様子を描いて国家が豊かになるよう本職に勤しめと述べ、五コマ目は国産品の質を向上させて日本製品を凌げとグラフが描かれ、最後の六コマ目で「公民ならば法を守るべきなのに、それもせずに同胞の財産にまで手を出すとは何事だ。愛国を汚すな。」と結ばれている。

青い方は一見良さそうに見えるが、ほとんど人の顔が見えない。三コマ目にはデモ行進をしている人達がいるが、表情がなく、上の赤のこわーい顔とは対称的である。愛国を口実に自分達の欲求を全開にしている赤い人達、これは論外にしても、大人しい青い人達も不自然だ。「愛国」の「愛」は元来コントロールが効きにくい、激しく、爆発しやすい感情である。
今回、尖閣問題の反日デモで、日本食の飲食店を破壊したり食い逃げしたり、略奪行為を働いたり、放火したりした人達は、いわば愛国を自分の欲望の達成に利用した人達だった。不法行為は論外としても、愛国を利用する風潮は社会に溢れている。他にも日本車が破壊された事件を受けた車の買い換え、日本製品を国産品や他国の製品に買い換えの顧客を見込んで「愛国割引」なるものが登場したのも、いわば愛国を商売に利用していると言えるだろう。
オリンピックで金メダルを、ノーベル賞を同国人が獲ったときにわき上がる感情、あれが愛国心なら悪くない。でも、愛国は一歩間違えば害になり、毒になる。それを忘れないようにしよう。
おめでとうございます--二つのノーベル賞 ― 2012年10月11日
今年のノーベル医学生理学賞は山中伸弥さん、ノーベル文学賞は莫言さんでしたね。おめでとうございます。
それにしても、ノーベル賞って本当に不思議です。もらうのは個人なのに、国をあげて大喜びしたり、お祝いしたりしますよね。こういうとき、わき上がる嬉しさ、みたいのが、ごく自然の愛国心かもしれませんね。
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