本物の鳥獣戯画を見る ― 2014年11月26日
少し前のことになるが、京都国立博物館の特別展覧会「国宝鳥獣戯画と高山寺」を見に行った。展覧会は二部に分かれており、鳥獣戯画の一度目は前半、二度目は後半を展示するというから二回足を運んだ。なんと言っても今回は東京と京都の国立博物館に二巻ずつ収蔵されているものが一堂に会し、本来は巻物の一部だった「断簡」も展示され、更に今のオリジナルにはない部分が含まれる狩野探幽が模写した「模本」まで見ることが出来るのは、なかなか無い機会である。同じ事を思った人が沢山いたとみえて、展覧会は全期にわたって大盛況、おまけに祝日に出かけたのでとびきり長い行列に並んだのだった。
鳥獣戯画は正式名を「鳥獣人物戯画」、甲・乙・丙・丁の四巻の長~い絵巻物である。絵が描かれた平安時代や鎌倉時代も、時代が下って江戸時代でも、絵を見るのは身分を問わず最高の娯楽であった。いまでこそ国宝になったが、作者は不明、江戸時代までは誰もが頼めば借りて見ることが出来たというこの巻物、今まで一体どれほどの人がこの巻物を見たのだろう。
一番有名なのは平安時代に描かれた甲巻だったのだと今更ながら知った。ウサギとカエルが相撲したり、賭弓したり、カエルが田楽踊りしたり、線が生き生きしていて躍動感があり、表情も豊かである。
なぜこのような作品が生まれたのか考えていたとき、ふと、妙心寺塔頭・退蔵院の副住職に聞いた話が脳裏に甦った。退蔵院には多くの貴重な絵が残されているが、それらは昔、絵師が寺に長逗留して僧侶等と共に過ごしながら描いた絵であり、絵師はそうした環境の中で腕を磨き、寺としても絵師を育てていたという話しである。襖絵を頼まれて寺にやってきた絵師がもしかしたら、時間が空いたときに、小僧相手に楽しい絵を描いて喜ばせたのかも、それとも、寺に身を寄せていた病気の子どもを元気づけるために描いたのかも、などと想像すると、なんともワクワクするではないか。
なお、こちらの展覧会、目玉は鳥獣戯画だが、展示物の多くは高山寺を再興した華厳宗中興の祖・明恵上人にまつわるものであり、なかなか見応えのある内容であった。
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