『絵図女学修身教科書』で学ぶ良妻賢母への道2008年04月27日

 初期の女子小学堂の「修身」科で使われた教科書『絵図女学修身教科書』の一部を資料集で見た。絵図と称するだけあり、挿絵がページの上三分の一ほどを占める。後は本文、そして本文の下に注釈が小さくついている。挿絵は女性が掃除をしたり、刺繍をしたり、女性客をもてなしたりする絵柄である。光緒28年(1902年)10月出版だそうである。

 本文には「女児経」が採られている。(他に「女誠」「女論語」も)伝統的な女の子向けの処世訓で、韻を踏んでいて読みやすく覚えやすい。内容は、日が昇ったら起きて、掃除して、身支度をしたら、刺繍をせよ。噂話には耳を貸さず、夜歩きや大笑いや大声は慎まねばならない…といった女性としての身の処し方を教え、また、11歳ともなれば大人であり炊事万端怠りなく空いている時間は刺繍に励み――14、5から20歳になれば娘として家に居られる時間も少ないので嫁になることを学ばなくてはならない――等々、学問に関わる内容は一切なく、ただただ、年齢に応じてより厳しく心身を律し、家に閉じこもって家事に勤しみ、孝行を尽くし、なお家の為に嫁いで、良い嫁になるよう諄々と説かれるのである。

 「教科書」と称しても、教えられるのはこうした「女児経」「女誠」「女論語」であった。女子教育が始まった清末、女子に求められるのは相変わらず「四徳」「三従」であり、伝統的な儒教思想そのものを学校教育に持ち込んだものにすぎなかった。

参考:国立編訳館主編『小学教科書発展史』

娘がもらった国語教科書2008年04月27日

 娘が小学校に入学した日、教科書をもらってきた。国語は「あたらしいこくご」一年(上)、出版社は東京書籍、全100頁(含付録)である。

 早速ページをめくってみた。可愛いイラストと大きいひらがなが印象的である。最初の「うれしいひ」は「おや なにかな」の台詞の後は、ほぼ動物が沢山出てくるカラフルなイラストのみで物語が表現される。子供の想像力を引き出す教材であるらしい。あいさつ、あいうえお、ことばあそび、話す練習などが続く。一冊に収録されているお話は、もりやまみやこ「てがみ」、トルストイ再話「おおきなかぶ」の二篇である。「てがみ」は主人公のきつねくんが、けがをして休んでいるねずみさんに書くほのぼのとして心温まるお話、「おおきなかぶ」は次々と家族やいぬやねこ、ねずみも加わって、おおきなかぶをひっこぬくだけのストーリーで、台詞は「うんとこしょ、どっこいしょ」のかけ声だけ、なのが面白いお話。考えてみれば「おおきなかぶ」はロシア民話の再話だから、これを一年生が国語として学ぶことに対しては、不思議な感じもあるが、うちだりさこさんの訳「うんとこしょ、どっこいしょ」のかけごえの繰り返しが何とも絶妙だから、選ばれたのだろう。その後は絵本の紹介あり、絵日記の書き方あり…そして「かんじのはなし」で漢字のなりたちなどについて学び、更に「かぞえうた」で漢数字を学ぶ。上冊で学ぶ漢字は「山」「川」「木」「口」「目」「上」「下」「日」「月」「手」「耳」の11文字及び漢数字「一」「二」「三」「四」「五」「六」「七」「八」「九」「十」10文字の合計21文字である。

 東京書籍のHPにあった「平成17年度版『新編 新しい国語』年間指導計画(一年)によれば、1学期はひらがなの練習が主で、2学期9月になってようやく漢字の勉強が始まる。上冊はここまで。一年生で習う漢字は80字だから、下冊で59字学ぶわけだ。ちなみに現在の学習指導要領では、小学校の6年間で学ぶ漢字の数は1006字である。

 裏表紙に「この教科書は、これからの日本を担う皆さんへの期待をこめ、国民の税金によって無償で支給されています。大切に使いましょう」とあった。どうぞ、大切に使ってくださいね。

参考:「あたらしいこくご」一年(上)、平成16年検定済み、平成20年発行、東京書籍 「平成17年度版『新編 新しい国語』年間指導計画(一年)」東京書籍 http://www.tokyo-shoseki.co.jp/