中国の小学一年生の国語(語文)教科書2008年04月28日

 素質教育への流れ、教学大綱から課程標凖への移行、義務教育法の改正など、中国教育の近年における変化は教科書にはどのように反映されているのだろうか。

 日本の国語にあたる「語文」教科書について見てみよう。現在の中国で実際に使われている北京師範大学出版社の義務教育課程標準実験教科書「語文」一年級上冊(2006年6月出版)は、全109頁、カラフルで可愛いイラストが散りばめられている。

 全体的に学習量が多く、内容も濃い。一年生が学ぶ一冊目の教科書ながら、5首の古詩(漢詩)が教材として選ばれており、しかもこれらの古詩を含め暗唱を要求される課文(詩)が19篇もある。無論、詩には相当難しい漢字も使用されている。ピンインの学習は教科書の中程から始まるが、それまでにも使われているから、すでにピンインは理解していることが前提となっていると思われる。巻末の「認字表」(認字=読んで理解出来る字)には328字、「写字表」(写字=書ける字)には136字が載っている。 

 実は中国の現行の語文課程標凖では、一年生と二年生の間に50篇の詩文を暗唱し、1600~1800字の常用漢字を理解でき、そのうち800~1000字は書けることが要求されている。日本の学習要領で定められている、一年生が学ぶ漢字の数は80文字、二年生は160文字である。中国は漢字の国だから、単純には比べられないが、中国の小学生に科せられている学習要求は相当高いと言えるだろう。

 一方、以前使われていた教材は「カラス水を飲む」「小さな船」「雪の中の小さな画家」くらいで、後は…以前は必ずあった党のリーダーや英雄、烈士の逸話は見あたらない。但し、さりげなく詩や歌詞のなかに「大きくなったら人民のために大きな功労をたてます」(上学歌)や「我々は祖国の花、祖国は我々の家」(家)といった詩句がある。教案によれば「国家盛衰、匹夫有責」(国家の盛衰は、国民一人一人に責任がある)の観念を浸透させることがのぞまれており、依然として国語教科書による愛国教育は健在である。しかし、以前より明確でなくなり、目立たなくなっているようにみえる。

コメント

_ (未記入) ― 2009年03月20日 19時25分53秒

中国の教科書ですが、欲しいところですね。羨ましいです。

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