塩野七生『わが友マキアヴェッリ』を読む2011年04月19日

 塩野七生『わが友マキアヴェッリ-フィレンツェ興亡』を読んでいる。実は欧米社会におけるチェーザレ・ボルジアの存在の大きさがずっと謎だった。『君主論』によって、彼が「歴史上の人物から理論上の象徴になった」というのは分かっていたけれど、果たしてチェーザレ・ボルジアはそれほどの人物だったのか、マキアヴェッリは彼のどこに理想の君主を見いだしたのか、塩野七生『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』を読んだときには、まだ分からなかった。彼の冷酷さや豊かな才能、周囲を彩るスキャンダル、そして栄華とあっけない衰退はあまりにもドラマティックで、こちらに気を取られ、本質を見極められなかったせいだと思う。

でも合わせて『わが友マキアヴェッリ』を読むと、マキアヴェッリのフィレンツェの書記官としての働きぶり、フィレンツェの次席外交官としてチェーザレ・ボルジアと直接接した経緯、当時のフィレンツェの国際的な立場などが分かる。チェーザレ・ボルジアの卓越した政治能力にイタリアを統一しうる君主の理想を見いだしたマキアヴェッリがようやく理解できた。長年の疑問がようやく解けたような気がしている。

読んだ本:塩野七生『我が友マキアヴェッリ』(新潮文庫)