いつ着替えたの?――『蒙学体操教科書』(体操科・1903年)2008年05月12日

日本版(原本)と中国版(翻訳)の服装比較

 『小学教科書発展史』に「萌芽期」の教科書として紹介されている体操科の教科書に『蒙学体操教科書』がある。翻訳は「無錫 丁錦」で光緒29年(1903年)に上海の文明書局から初版が出されている。 『蒙学体操教科書』は表紙に「初等小学堂学生用書」とあり、小学生向けであるが、整列、行進、方向転換の方法などが教えられ、挿絵にも軍人らしき人物が描かれ、軍隊の教練を思わせる。

 この『蒙学体操教科書』の原本、筆者の調査によれば、坪井玄道,田中盛業編『小学普通体操法』(金港堂、1884年-明治17年)第一冊である。両者を比較すると、資料集に採られた部分を読んだ感じでは、ほぼ忠実に翻訳されている。但し、版本は筆者が確認したものとは異なるようである。というのも、筆者が確認した国会図書館の近代デジタルライブラリーの『小学普通体操法』と翻訳書では、挿絵が微妙に異なるのである。

 原書『小学普通体操法』にはシャツとズボンを着た先生or生徒らしき人物が、翻訳書には軍服を着た軍人らしき人物が描かれているのだ。どこで着替えたのだろう。もしかしたら、『小学普通体操法』は改正版が1888年-明治21年に出ているので、このとき書き換えた可能性が高いように思うが、中国語に翻訳されるときに手を加えたのかも知れない。また、なぜ服を換えなくてはならなかったのかも疑問である。もしご存知の方がいたら、ぜひ教えて欲しい。

参考:  司琦 著 国立編訳館 主編 『小学教科書発展史』

 坪井玄道,田中盛業編『小学普通体操法』は、国会図書館近代デジタルライブラリーの以下のURLで画像を見ることが出来ます。http://kindai.ndl.go.jp/BIImgFrame.php?JP_NUM=40075688&VOL_NUM=00001&KOMA=1&ITYPE=0