愛国主義教育実施綱要の中身5-第三章(1/2)2012年10月04日

ようやく第三章「愛国主義の重点は青少年」である。第三章は十五条から十九条までで、主に重点教育対象、教育を行う組織及び教育手段について規定している。重要な条項は全訳、その他は抄訳で紹介する。まずは重点教育対象のことを述べている十五条と学校の愛国主義教育に言及している十六条から見てみよう。

 

十五条は、「愛国主義教育は全国民教育であり、重点は青少年である。学校、部隊、村、街道(筆者註:町内会のようなもの)、機関と企業単位(筆者註:官公庁や各種機関、企業及びそれに属する部門)、特に中国共産主義青年団、少年先鋒隊等の組織は、青少年の愛国主義感情を育み、彼らの愛国主義の覚悟を高め、正しい理想・信念・人生観・価値観を持つよう導く思想政治教育を担わなくてはならない。」というもので、愛国主義教育の重要な対象が青少年であること、学校に加え、地域や職場のあらゆる組織、そして特に共産主義青年団や少年先鋒隊などの共産党の組織を活用して、愛国主義教育が行われていることがわかる。現在の中国では小学生になると少年先鋒隊に入隊して主に課外活動を通じて共産主義を学び、中学生になると優秀な者が選ばれて共産党青年団に入団、やがてそこで選び抜かれた優秀な者が若手のエリート共産党員となり、高級官僚が育成されていく仕組みになっている。現在の中国のトップ胡錦濤国家主席をはじめ、多くの国家の指導者がこの共産党青年団であり、政界を二分する大きな政治勢力となっている。

 

十六条には学校教育における愛国主義教育の科目や方法等に関する記述が含まれているので少々長いが全訳する。「学校は青少年に教育を行う重要な場である。愛国主義教育を幼児園(筆者註:日本の幼稚園や保育園にあたる)から大学の学習と人間教育の全課程に浸透させ、その学習における主要な役割を果たす場として機能させなくてはならない。各省・自治区・直轄市の教育部門は、国家教育委員会が頒布した『小中学校の中国近現代史及び国情教育の総体綱要』と『高校の思想政治、小中学校の語文(筆者註:日本の国語にあたる)、歴史、地理科の教育綱要』の要求に照らして、各学科(自然科学系の科目も含む)の愛国主義の計画を制定し、愛国主義の内容を分かりやすく関連教科の内容に入れ込まなくてはならない。各種大学・短大・専科学校は積極的に中国史、文学、芸術、科学技術等の伝統文化選修課科目(註:一般教養の選択科目のようなもの?)に愛国主義教育を主眼としたテーマの講座を設けるべきである。小・中・高・大学は愛国主義教育のための課外授業を設け、学生にホンモノを見せる教育を行うべきである。高校の高学年と大学・専科学校では、学生を組織し適当な生産労働、社会実践、軍事訓練等の活動に参加させ、労働者・農民・兵士への親近感と国家への責任感を強化させるべきである。教師は愛国主義を自らの身体で体験し力行し、青少年の見本とならなくてはならない。」と、かなり長い。

わざわざ別に綱要まで出して強化を求めている小中学校の語文、歴史、地理科、高校の思想政治は特に重点科目であることは疑いないだろう。ここには見えないが、徳育の科目とされている小学校低学年の「品徳と生活」、小学校中学年以降の「品徳と社会」、初等中学では「思想品徳」も、愛国主義教育の要の科目の一つである。更に他の科目も全て愛国主義教育の機会を作ることが求められている。(2012年10月5日改訂)

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