フィンランドの国語教科書を読む ― 2008年05月24日
PITA(OECD生徒の学習到達度調査)で2003年と2006年の二回連続高順位を獲得したフィンランドの教育法が近年注目を集めている。考える力がつく、というフィンランドの教育について、実際の教科書を見てみたいと以前から思っていた。
幸いなことに、いま、フィンランドの教科書を日本語で見られる。『フィンランド・メソッド 5つの基本が学べる フィンランド国語教科書』としてフィンランドの小学3年生~5年生までの国語教科書が翻訳されて日本で出版されている。
3年生の国語教科書を見てみた。本文は全部で五部に分かれ、各「部」は、「夏休みについて、友達と二人で/班ごとに/クラス全体で、話し合ってみましょう」など話し合うことを求められる課題、「もし動物に曲芸を教えることが出来たら、どんな動物に、どんな曲芸を教えたいと思いますか」など絵を描いて文章を書いて発表を求められる課題、「ほめられた」「失敗した」ことなどについて「何をしたの?」「どこで?」「いつ?」「どう感じた?」「それからどうしたの?」など論理的に説明を行うことが求められる課題で始まる。
また、教科書の対応年齢と同じ小学校3年生の生徒と先生が全体を通じて登場する。この生徒と先生が作り出すストーリーはフィンランドの小学校の雰囲気や授業風景を伝えてくれてとても興味深い。
小説などの文学教材はもっぱら「すいせん図書」として登場するのが面白い。第1部で「ひみつクラブ」他の本、4部で「エラちゃん」シリーズ「仮面とマント」シリーズのストーリーの一部、作者のメッセージ等を紹介し、興味を喚起している。それらは、フィンランドで著名な児童文学であるらしく、紹介文も絶妙で、思わず読みたくなる。 例外は、物語は「カラスとじょうろ」「ライオンとネズミ」「クマの子」「くらのとびら」の4話である。これも単なる物語としては登場しない。「書き出し」から「問題解決」まで、物語の構成を学ぶことが出来るようになっている。他にも図書室を利用することや、教室に本棚を置いて本を読めるようにするなど、読書を強くすすめているのも、この教科書の特徴である。恐らく小学3年生という学年も関係しているのだろう。
巻頭の解説によれば、フィンランドの国語教科書は以下の5つの力が自然に身に付くように構成されているという。1)発想力、2)論理力、3)表現力、4)批判的思考力、5)コミュニケーション力、である。また、教科書は本文と設問で構成されているが、答えを生徒が導き出す過程を重要視するため、解答は用意されない。適切な解答をしたとしても、理由がなければ「正答」とは認められないのであり、教師用の指導書にも原則として「正答」は掲載されていないという。つまり、先生も生徒も、問題について、一緒に考え、話し合い、解決策を模索するということらしい。
なかなかよく考えられた教科書だと感心した。ちなみに、この教科書に載っている「カラスとじょうろ」はイソップ寓話で、中国の小学一年(上冊)の語文教科書に載っている「カラス水を飲む」と同じ教材である。この「国際的な」教材の発見もちょっと嬉しかった。
参考:『フィンランド・メソッド 5つの基本が学べる フィンランド国語教科書 小学3年生』
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