中国の小学一年生が暗記する詩文2008年06月18日

 以前紹介したように中国の現行の語文(日本の国語科)課程標凖では中国では小学一年生と二年生で合わせて50の詩文を暗記するよう指導している。だから、小学一年生といえども国語で暗記を求められる詩文の数は半端ではない。でもさすがに一年生向けなので、分かりやすく、面白い教材が選ばれている。小学校の教科書一年級上冊(2006年、北京師範大学版)から一部について紹介しよう。

「山村」(邵雍、北宋)
一去二三里,
烟村四五家。
亭台六七座,
八九十枝花。

山村の風景を詠んだ美しい詩である。大意は「山道を二、三里ほども進んでいくと、四、五軒の家の食事を作る煙が見えた。道ばたには六、七つの東屋があり、そのそばには八、九、十の枝の花があった。」といったところか。文字は全部で二十あるが、難しい字はほとんどない。「山村」が収録されている単元は「3、数字」、漢数字の一から十までが詠み込まれ、子供に数字を覚えさせる詩としてよく知られている。なお、これは北京師範大学版の一番目に登場する古詩で、人民教育出版社版にも収録されている。

 次に紹介するのは謎々。

遠看山有色,
近聴水無声。
春去花還在,
人來鳥不驚。

大意は「遠くを見ると山に色があり、近くでは水の音は聞こえない。春は去っても花は在り、人が来ても鳥は驚かない。」といったところ。ちなみに答えは「山水画」である。面白いものを紹介することで、子ども達に古詩に対する興味をもってもらう工夫なのだろう。

 現代詩には、伝統的な教材も含まれている。例えば「小小的船」(小さな船)、中国教育界の元老・葉聖陶の詩である。

「小小的船」(葉聖陶、1894-1988、22頁)
彎彎的月兒小小的船,
小小的船兒兩頭尖。
我在小小的船裏坐,
只看見閃閃的星星藍藍的天。

大意は「三日月は小さな船、小さな船は先が二つとも尖っている。小さな船に坐ると、キラキラ輝く星と蒼い色の空だけが見える。」といったところ。三日月を小さな船に例えるなんてロマンティックである。この詩は童謡にもなっていて、子ども達に親しまれている。

 それにしても、一年級上冊の一冊中、教師用の指導書では、古詩7首と謎々1篇、現代詩13篇、合計21篇について暗記が推奨されている。古詩の学習と暗記は、日本の小学一年生とは比べ物にならない密度の濃さとレベルの高さだが、一年生の内は意味に通じることは求められず、主に音と親しみ、伝統文化に触れることを重要視しているようである。