スポーツ大国を支えてきた「少年体校」2008年07月28日

 北京オリンピックまであと11日。ニュースによれば、オリンピック村も27日、正式に開村した。中国の体育代表団は1099人、そのうち運動員は639人だそうだ。この中国のスポーツ界、「少体校(少年体校とも)」という、いわば体育学校の出身者によって支えられていることをご存知だろうか。

 アメリカのバスケットボール・リーグNBAのスーパースター姚明、アテネ五輪110mハードルで金メダルに輝いた劉翔、中国女子サッカーチームの主将・李潔…などなど、世界で活躍するスポーツ選手、オリンピックに登場する選手の多くは「少体校」の出身なのだ。

 「少体校」は運動能力の高い子供を集め、プロのスポーツ選手を育成することを目的とした学校である。中国では9才から12才の子供は普通小学以外にも区の「少体校」に行くことができる。以前は田舎から抜け出すことができる子供の有望な進路の一つとして、或いは将来大学を受けるときに有利になる等の理由から、親も比較的積極的に子供を「少体校」に送り込んできた。しかし、一人っ子政策や経済発展、大学受験の激烈化と就職難等の状況で、近年は事情が変わってきている。

 なにしろ「体校」といえば、汗と涙と「三従一大」、というスローガンが有名だ。「三従一大」とは、厳しく妥協を許さないこと、高難易度を設定して挑戦すること、実際の試合を想定して練習すること、を指す。厳しい訓練を受ける上に怪我も多い。「少体校」は初等教育の範囲なので、体育と音楽以外は「課程標凖」に沿った授業を行うが、大学受験熱が加熱している現在では教育の質も問われるようになった。「少体校」に進む子供は減ってきており、どの学校も生徒集めに苦労している。恵まれた訓練環境と宿舎を用意、食事の費用を免除して、地元以外の貧しい地域から生徒を集める、という現象も出現している。社会状況の変化により「体校」の存在自体が危うくなっていると言えるだろう。

 人材を発掘して、「苗」から育てる、という徹底した英才教育が、現在の中国スポーツ界を支えてきた。しかし、近い将来、「少体校」という特殊な学校教育に依らないスポーツ選手の育成が必要になりそうだ。