塩野七生『ローマ人の物語1 ローマは一日にして成らず』を読む2009年09月29日

 ささやかな隙間の時間を使って、最近塩野七生さんの本を読んでいる。『イタリア遺聞』に続き、昨日やっと『ローマ人の物語1 ローマは一日にして成らず』を読み終わった。一気に読めばあっという間なのに、切れ切れに読むから、読み直したりして、時間も余計にかかる。それでも面白くてやめられない。

 『ローマは一日にして成らず』が扱っているのはローマ誕生からイタリア半島統一までの五百年間である。特に興味深かったのは、ローマ人とギリシア人、エトルリア人という三つの民族の特性とそれぞれの国がたどった歴史を、塩野七生さんが独自の視点で比較し、ローマだけが大を成した理由を各方面から論じているところだ。

 塩野七生さんによれば、三つの民族のなかで、ローマだけは排他的ではなく、他者を受け入れ、共に大きくなる懐を持っていたらしい。例えば、ローマは他所から大移動してきた民族をローマ市民として迎え、長には元老院の議席が与える、という形で、他者を受け入れてきたといい、奴隷制度もアテネやスパルタのように固定ではなく、金や雇い主の温情で解放されることでその子供の代からはローマ市民になることができたという。更に戦争で敗北した国にも自治を認めるのが通例で税金を課すこともなく、ただ、軍隊を出動させる義務を課しただけという、当時にあっては極めて寛容な政策を採っていた。ローマは敗者をも同化しながら、大を成していったのである。

 ローマはこの五百年の間に、幾度にも渡る危機、惨敗、屈辱を経験したが、そのたびに真摯に問題と向き合い、システムを改善し一致団結して乗り越え、強くなっていった。ローマは常にそれをなし得る人材を有していたのである。ローマの包容力が生んだ人材の力こそが成長を支えたのだと感じた。

読んだ本:塩野七生『ローマ人の物語1 ローマは一日にして成らず』


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コメント

_ BIN★ ― 2009年10月24日 14時17分51秒

興味を惹かれましたので、私も買ってきて読むことにしました。

_ ゆうみ→BIN★さん ― 2009年10月28日 11時27分56秒

続きも面白いですよ。カタルゴの名将ハンニバルの人物像を知ると、ポエニ戦争が何倍も興味深いものに見えてきました。

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