中国の教科書と対日感情2008年03月13日

 日本では中国の歴史教科書がよく話題にのぼる。中国では歴史を学び始めるのは小学校高学年からで、本格的な歴史学習は中学校からである。教科書は5冊、第一、二、三冊は古代史、第四冊は近代史、第五冊が現代史であり、近現代史の占める割合が非常に多く、その中における日中戦争についての記述は日本の教科書とは比べものにならないほど詳細で分量も多い。抗日の歴史を学ぶための課外学習も大いに推奨されている。従って、中国の歴史教育が中国人の日本観に影響しているのは事実である。しかしながら、中国人の対日感情ともいうべき基礎の部分は、実は歴史教育が始まる以前、小学校一年生から徐々に醸成されたものである。  従って、中国人の対日感情の源泉を教科書から推し量ろうとするなら、歴史教科書のみの検証では役不足である。中国の教育を知るために…少々古いデータだが…1994年の小中学校の1週間あたりの教科毎の授業時間数を確認すると、特に小学校では国語(中国語では「語文」)が圧倒的に多く10時間~7時間、「数学」が4~5時間、中学校になると「語文」と「数学」がほぼ同じ時間数になる。他にも理科にあたる「自然」があり、数学、社会、歴史、体育や音楽、美術といった学科もある。「思想品徳」「思想政治」「労働」「労働技術」といった見慣れない学科があることに気が付く。「思想品徳」「思想政治」は道徳科的な要素の他に、思想教育的要素を強くもった教科である。「労働」「労働技術」は技術の授業に近いもので、いまは「信息技術」(情報技術)というコンピューターを学ぶ教科になった。更に1993年からは全国の一部の実験小学校で「英語」の授業も始まっている。  このなかでは 「思想品徳」「思想政治」だけが思想教育を担っていて、他は日本とあまり変わらないようにみえるが、実際には中国の教育には全ての教科に思想教育の役割が科されて、浸透している。特に文系の学科である小学校の国語を中心に多くの思想教育教材が盛り込まれている。

 小学校において最も授業数の多い国語(語文)の影響力は大きい。例えば「蘆溝橋の獅子」という教材がある。蘆溝橋は日中戦争の端緒となった蘆溝橋事件(中国では1937年7月7日に起きたことからこれを七七事変とよぶ)が勃発した場所である。現在の中国では「抗戦」開始の地として、小学校四年生の国語教科書で蘆溝橋事件について詳細に学ぶ。更に北京の小学生は課外学習でこの蘆溝橋と中国人民抗日戦争記念館に行く。私が蘆溝橋を訪ねたときも小学生の団体が来ていて、記念館内に展示してある写真を見て「わー」とか「おーっ」とか言いながらも、感想文を書かなくてはならないらしく、説明を熱心に読んでノートに一所懸命書き込んでいた。この課外学習を通して蘆溝橋は彼らの心に深く刻まれたに違いない。

 いまの20-30代の若い世代は小学校の低学年から愛国主義的な単語で読み書きを覚え、共産党の指導者や模範的共産党員、日中戦争の英雄の逸話などを教材に言葉の運用能力を養ってきた世代である。そしてその前の世代は教科書があったにせよ、実際には毛沢東語録が教科書代わりだった世代である。検定制になった1985年以降、教科書には多くの古典教材や新しい時代を反映した教材が増え、以前と比べれば政治色は薄れつつある。

コメント

_ Cospaly ― 2009年03月20日 20時08分13秒

教科書と感情について感想を申し上げます。
あくまで個人的な感想でお許し頂きます。

私でも教科書限らず、映画など反日教育を受けていた人間です。
けれども、全く反日の感情を持たないと思います。
持っているのは、教育が無くても、普通の異国の人々が祖国にたいすr感情だと思います。それこそ正常なものだ思う。
日本人は、日本国を世界一の国を思う
中国人は、中国を世界一の国を思う
それこそ当然なこと、他国が一番とおもうなら、たとえ事実としても感情的に、精神的に可笑しいことだと思う。
素人のコメントは恐縮です。
でも、おいらは中国人なのに、そなたの資料を見て、おいらより知っているのは、感謝です。

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