中国の大学受験「高考」と加点制度 ― 2010年05月22日
今年は6月7日と8日に中国の大学試験「高考」が行われる。「高考」とは本来「全国普通学校招生考試」の略称である。2008年から「全国大学統一入試」と改称されたが、略称はそのままになっている。中国は9月入学なので、6月に試験がある。日本と違い、大学ごとの試験が行われず、この試験の合否のみで決まるので、受験生の力の入れ方も社会的な注目度も非常に高い。
ところでこの「高考」には「加点制度」がある。近年変化が現れているようなので、覚え書きとして残しておこうと思う。
「加点制度(原文:加分制度)」は文字通り、ある条件を満たすと、大学試験に点数が加算される制度である。この加点制度、教育部が規定している項目は元来多くない。スポーツや科学の大会等で優秀な成績をおさめた者、人助けをして表彰された者などの個人の業績に加え、少数民族、烈士の子女、台湾人、華僑等が受験する場合に20点以内で加点される。
もっとも報道を見ると、地方によって規定は異なり、ご褒美、奨励他様々な意図から作られた細かい規定もあるらしい。そこで加点を得るために、親子一丸となって、加点の対象になる習い事や勉強に必死に取り組むといい、一方で加点の対象から外されると、その大会の出場者が一気に減少するといった現状も見られるという。また、経済発展に寄与するとして条件を満たした企業経営者の子女、SARSが流行した時は感染地域で働く医療関係者の子女に加点されるなど、時々の政策に沿って加点制度がご褒美の意味で使われる場合もあるようだ。
正直なところ、本人の業績や言語的なハンデなどに配慮するのはともかく、親の業績に加点が与えられるのはどうも違和感がぬぐえない。激烈な受験戦争に、加点を稼げる「いい親」を持つ子供とそうでない子供、という差があるのが中国の現状である。
「二〇一〇年普通高等学校招生工作規定」を見ると、以前と比べ加点の対象も狭められ、加点数も全ての項目が20点以内と控えめになっている。近年、腐敗や不公正性が指摘されて、教育部も制度見直しに乗り出しているらしい。今後の情勢を見守りたい。
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