中国・清末、英文併記の字書『絵図増註華英五千字文』2008年07月09日

『絵図増註華英五千字文』1頁
 いま日本はもとより中国でも子供の英語教育が盛んである。時は遡って百年前、清末の中国人も中国語と英語を子供に同時に学ばせたい、と考えたようだ。光緒32年・1906年発行の『絵図増註華英五千字文』は清末にもそんなニーズがあったことを思わせる字書である。

 一頁目は天、星、日、月、風、霜、雨、雪、霧、露、雲、霞……計24文字。天空、気象現象など、関連のある字ごとに、四文字ずつ区切られ、右側に英語、真ん中に漢字、左側に文字の音、意味、四声(平声・上声・去声・入声)が並ぶ。例えば一番目の「天」なら「sky/天/音腆、天地也、平声」という具合である。更にページの下方には「天」の字に合わせ「地球」のイラストも載っている。こんな調子で五千文字が収録されているわけである。

 ちなみにこの『絵図増註華英五千字文』は私塾で使われていた教材を、「秀水居主人」が声調の間違いを正し、英文対照とし、更に文字の理解を助ける為にイラストを入れて、上梓したものであるという。一頁目に「四明 補拙居士」編集、「四明 姜岳孝夔」注釈とあるが、奥付がなく、発行者等は不明である。

 ところで『絵図増註華英五千字文』も元本も初学の教科書としての役割を果たしていた。序文には「学び初めて一、二年ほどですべて暗唱できるようになり、文字の意味もスラスラといえるようになる」とある。かつての中国における文字学習のスピードは現代を遙かに超えている。
 
参考:『小学教科書発展史』国立編訳館主編
四声=中国音韻学では平声(ひょうしょう)・上声(じょうしょう)・去声(きょしょう)・入声(にっしょう)といいます。

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