塩野七生『ユリウス・カエサル ルビコン以前 ローマ人の物語』を読む2009年11月09日

塩野七生『ユリウス・カエサル ルビコン以前 ローマ人の物語』
 ずいぶん長いこと、切れ切れながら、塩野七生さんのローマ人の物語を読んでいる。現在、ユリウス・カエサルがルビコンを渡る前、ポンペイウスとの戦い前夜までの部分をやっと読み終えたところである。

 カエサルが40歳にして立った英雄である、というのを初めて知った。若い頃はおしゃれで、読書家で、話し上手で、人気者ではあっても、際だった活躍もなく、同輩と比べて目立った出世をしたわけでもなかったらしい。むしろ天文学的な借金王として、そして元老院議員の三分の一の妻を寝取ったというほどの希代の女たらしとして有名だったという。

 その同じ人物が40歳から、元老院を敵に回し民衆を味方につけ、ローマ一の大富豪クラッススと英雄ポンペイウスに三頭政治を持ちかけ、執政官の地位を勝ち取り、有能な政治家ぶりを発揮するようになる。その後は、聴衆を魅了してやまない弁論家、ガリアで数限りない戦いを指揮する中では、創意工夫をこらした作戦で次々と困難な戦いを勝利に導き部下を心服させる有能な司令官、と多方面において天才を発揮する。しかも元老院への報告としてカエサル自らによって書かれた『ガリア戦記』は当時のローマ大衆を熱狂させたベストセラーとなり、いまでもラテン散文の傑作とされている。そして、なにより、カエサルという一人の人間が、西ヨーロッパにあたる全ガリアを制圧してローマ化するという壮大な構想を持ったことで、ヨーロッパの原型がある意味作られた意義の大きさを、塩野七生さんの著述からは感じ取れる。 (11月10日改訂)

読んだ本:塩野七生『ユリウス・カエサル ルビコン以前 ローマ人の物語』(上・中・下、新潮文庫)

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