カエサル『ガリア戦記』を読む2009年11月09日

カエサル著・國原吉之助訳『ガリア戦記』(講談社学術文庫)
 塩野七生さんの書くカエサルの物語があまりに魅惑的であったので、カエサルが自ら執筆した『ガリア戦記』も合わせて読むことにした。岩波文庫他にもあるのだが、今回講談社学術文庫を選んだのは、アマゾンの書評を見て、こちらの訳がよいと評判がよかったからである。

 塩野七生さんの著述を先に読んでいたおかげで、『ガリア戦記』を非常に面白く読めた。カエサルが独創的な戦略とたぐいまれなる指導力によって、ローマを勝利に導いた経緯、当時のローマ人から見たガリアの風俗習慣等、キリスト教化される前のヨーロッパが見えて面白かった。カエサルが自ら三人称で書いた『ガリア戦記』は、客観的で直截、そして躍動感があり、より胸に迫ってくる。驚くほど読みやすい。訳の巧さもあるのだろうが、原文が素晴らしいのだろう。さすがラテン散文の傑作とされているだけのことはある。

 カエサルが、殺戮、略奪など、敵に対してはかなり残酷な制裁を行っていることも包み隠さず記述されている。『ガリア戦記』は数え切れないほどのガリア人が運命を翻弄され、甚大な被害を受け、残虐な制裁を経てローマ化された、その記録という側面もある。

 解説を見ると、『ガリア戦記』でカエサルは大方真実を語っているという。彼の部下達により、ガリア戦の詳細はすでに故郷に知られていたのであり、部下達も読むのだから。但し、カエサルが書かなかった部分への非難はあるらしい。つまり…カエサルが戦利品で莫大な富を蓄えたことなどである。実際カエサルはガリア戦で蓄えた富で天文学的といわれた借金を払っているのだ。もちろん、本人が書くのだから、自分に不利な部分を書かないことくらいは許されるだろう。それにこの本は執政官に立候補するために、民衆の人気取りを念頭に出版されたという面もある。

 ただし、気になるのは、カエサルがガリア戦を始めた理由である。どうも納得がいく内容が見つからない。解説にも「なぜガリアで戦争を始めたかの説明が、どうもわれわれを十分に満足させないのは、真の原因であった彼自身の野心について、ほおかぶりしているからだろう」とある。

 次は『ユリウス・カエサル ルビコン以後 ローマ人の物語』、カエサルが国賊と呼ばれることを覚悟してルビコン川を渡るところからだ。結果は分かっているのに、なぜかとてもワクワクしている。(11月10日改訂

読んだ本:カエサル著・國原吉之助訳『ガリア戦記』(講談社学術文庫)

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