冷凍インゲン事件に思う――『中国食品工場の秘密』に見る中国の日本向け食品工場の現状2008年10月15日

『中国食品工場の秘密』
 今朝、朝日新聞の一面に「冷凍インゲン、基準3万倍の農薬 中国製、主婦体調不良」の文字を見つけてドキッとした。記事をよく読むと、この冷凍インゲン、調理していた女性が一本味見しただけで吐き気や軽い呼吸困難、口のしびれなどの症状を起こして救急車で運ばれたという。検出された農薬「ジクロルボス」は6900ppm、基準値の3万4千5百倍という途方もない量だ。原液が混入された可能性もあるとか。

 ニチレイフーズ、といえば、先日読んだ青沼陽一郎『中国食品工場の秘密』にはニチレイ株式会社の農産物の生産管理について紹介されていた。『中国食品工場の秘密』は一人のジャーナリストが中国の日本向け食品生産工場を回ってその生産の様子と品質管理の現状をレポートしたものである。

 この本によれば…ニチレイは20年前から中国産の冷凍野菜の生産を立ち上げている。2002年の冷凍ほうれん草事件以来、品質管理の徹底を図るために、現地のパッカー(現地生産会社)と取り決めて、農薬の買い付けから何から適切な指導をする、「フィールドマン」とよばれる農業監視員を各農地に派遣し、農薬散布もすべて立ち会いのもとで行う直接管理体制を敷いていた。

 特に、「毒餃子事件」を受けて、生産工場でも独自の品質管理のルールや仕組みを設けていた。その厳しい基準に合格した工場だけがニチレイフーズの商品を生産していたらしい。今回の冷凍インゲンはニチレイフーズが中国山東省の北海食品から輸入したものではあるが、この管理体制のもとにあったはずである。

 『中国食品工場の秘密』を読むと、日本向けの冷凍食品を生産している中国の工場の製品は、ニチレイやニッスイなど日本の企業の品質管理センターの徹底的な審査を受けてから、日本に輸送されているという。それなのに…これだけの努力が報われなかった関係者のショックは大変なものに違いない。中国の冷凍食品業界が失った信用を取り戻すのも相当時間がかかるだろう。

 今回こそ、再発防止の為にも、日中の関係者のためにも、国や組織の面子にこだわらず、しっかりと原因究明を行ってほしいものである。

読んだ本:青沼陽一郎『中国食品工場の秘密』(小学館文庫、2008)

↓応援クリックお願いします(^^)

にほんブログ村 教育ブログへ

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://youmei.asablo.jp/blog/2008/10/15/3820731/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。