柳澤佳子『生きて死ぬ智恵』を読む2009年01月04日

柳澤佳子『生きて死ぬ智恵』(
 新たな年を迎えた。ふと本棚の柳澤佳子『生きて死ぬ智恵』がふと目に入って手に取った。ざわざわしていた気持ちが、瞬く間に落ち着いていくのが感じられた。

 「般若心経」は、『大般若波羅蜜多経』(全600巻)のエッセンスを、「空」の一字に集約してごく短く説いた経典である。そして私達が目にしている般若心経は、唐の名僧・三蔵法師玄奘が、この経典をわずか262文字(最後の「般若心経」まで入れると266文字)で漢訳したものである。三蔵法師玄奘の翻訳、ということについては異説もあるようだが、詳しくは知らない。

 ところで、この「般若心経」、中国語では音だけ聞いても、難しいなりに意味が伝わる。玄奘の漢訳を意識して読むと、一つ一つの真理を各4文字できれいにまとめており、中国語としても美しい響きを持っている。そしてその短い語句に実に多くの意味を込めている。この漢訳、サンスクリットの原典とは多少異なる部分もある。

 一方、日本の読経の方法で漢字を音読すると、冒頭の「觀自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄」は「くわんじざいぼさつ ぎやうじんはんにやはらみつたじ せうけんごうんかいくう どいちさいくやく」となる。読経に際して、漢字を音読すると、リズムが取りやすいのかもしれないが、日本語になっていないから、素人には音だけ聞いても訳が分からない。

 漢訳の原文を踏まえて、柳澤佳子氏が「心訳」した「般若心経」を読む。上述の冒頭部分、柳澤流ではこうなる。「すべてを知り 覚った方に謹んで申し上げます 聖なる観音は求道者として 真理に対する正しい智慧の完成をめざしていたときに 宇宙に存在するものには 五つの要素があることに気づきました。」単なる翻訳ではなく、彼女なりの解釈が加わった美しい丁寧な文体で、非常に味わいがある。日本人なので、美しい日本語で説かれた方がやはり心にしみ入るのだろう。

 柳澤佳子さんの本を紹介してくれたのは母である。NHKのハイビジョン特集で放送された「いのちで読む般若心経 生命科学者 柳澤佳子」を見た母が、ぜひに、と勧めてくれた。心がざわめいているとき、この本のページを捲ると、心に静寂が訪れる気がする。

読んだ本:柳澤佳子『生きて死ぬ智恵』(愛蔵版DVDBOOK、小学館、2006)

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