近代以前の中国人の日本観2009年02月23日

 中国人が論じる近代中国人の日本観を知りたいと思って資料を探していたら、ちょうどぴったりの論文を見つけた。北京大学歴史系教授・王暁秋「近代中国人日本観的変遷」である。以下に要旨をまとめておくことにする。

 日本という国の存在を初めて認識したのは中国であり、三世紀の『三国志』中の『魏志・倭人伝』から『清史稿』に至るまで、中国の史書には日本の記述は途絶えたことがない。しかし、実際のところ、近代以前の中国では、日本についての情報は極めて少なかった。阿片戦争後の1848年、徐継?により『瀛環志略』が出されており、これには日本についての記述があるが地理情報は不正確なもので、「日本は対馬と長崎と薩摩の三島から成る」と記載されていた。隣国の日本は当時の中国にとっては「東夷小国」でしかなかったのである。

 その日本観に変化が訪れる。王暁秋氏は、中国人が日本に注目するきっかけとなった三つの出来事を挙げている。一つ目は1868年の明治維新、二つ目は1871年の日清修好条規の締結(原文:中日建交、批准されたのは1873年)、三つ目は1874年の日本による台湾出兵(原文:日本侵略台湾)である。

 清朝政府にあって、比較的早くから日本に注目したのは李鴻章であった。李鴻章は1870年に日本で明治維新が起きたことを奏上しているし、1870年に日本が柳原前光・花房義質を派遣して外交及び貿易関係を結ぶよう促したとき清政府が「大信不約」を口実に拒絶しようとしたのを説得し自ら代表として修好条規締結を行っており、更に1874年には日本の変化の源泉が明治維新以来の変革にあるという認識と日本の中国蔑視の傾向への憂慮を奏上している。

 しかし、中国が本当に日本に注目したのは、1874年の日本による台湾出兵であったらしい。近代における日本と中国の交流の原点が、ここにあったことは、重要である。もっと書きたいところだが、遅くなったので続きは今度に。

参考:王暁秋「近代中国人日本観的変遷」『近代中国與世界-互動與比較』(紫禁城出版社、2003)

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