口パクだった「歌唱祖国」――北京オリンピック開会式2008年08月18日

 報道で知ったのだが、オリンピック開会式で「歌唱祖国」を歌ったのは、本当は7歳の少女・楊沛宜とのこと。9歳の少女・林妙可は口パクをして歌う姿を演技していたらしい。写真で見る限り、楊沛宜も林妙可ほどではないが、とても愛らしい少女だ。それでも敢えて容姿がより優れている林妙可を表舞台に立たせ、歌唱力のある楊沛宜が舞台裏で歌っていた、という事実は国内外で批判と話題を呼んでいる。

 とても印象的な場面だっただけに、開会式の音楽総監督・陳其鋼氏が少女2人を起用し「口パク」を採用した理由を「国益」と述べていると「CNN.com」の記事でみたときは、正直なところしらけた気分にさせられた。

 今日「asahi.com」で北京五輪の開閉会式の総監督を務める張芸謀が朝日新聞の単独会見に答える記事を見た。張芸謀は言う。「あれは私が決めた。議論が出るとは思っていた。我々は開会式の完璧(かんぺき)な美しさを追求し、3人の女の子を準備した。モラルの問題ではないし、そんなに重大な問題とは思わない。一種の創作だ。子供たちにとっても誇張して騒ぐべきではない。演奏も多くは録音を使っている。過去の五輪でも演奏は録音が多く、それはごく正常なことだ」もしも張芸謀がいつも撮っている映画だったら…エンディングに演技者と独唱者の名前が両方並んで出てくるだろうから問題にはならないかも知れない。ただ、議論を呼ぶと思っていたのなら、対策を立てていなかったのは不思議である。なんといっても、舞台はオリンピックの開会式なのだから、国内外の人々が今回のことに違和感を持ったのは正常な感覚だと思う。

 多くの人が感じている違和感の根底にあるのは「騙された」という思いだろう。完璧な美しさを見せられた後だけに、その美しさの影に欺瞞があることを知ったときの落胆も大きいのだと思う。二人の少女のためにも、せっかくの開会式のイメージを回復させるためにも、オリンピックのエンディング・閉会式で観客と世界の視聴者を納得させる演出が必要かも知れない。張芸謀監督、もしかしたら、そのあたりもすでに考えているかも?
 
参考:
「歌は口パク、花火はCG合成 北京五輪開会式の[偽装]判明」(CNN.co.jp)http://www.cnn.co.jp/world/CNN200808130007.html
「少女の口パク[私が決めた] 五輪開会式総監督単独会見」(asahi.com)http://www2.asahi.com/olympic2008/news/TKY200808180173.html

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