仏典翻訳の歴史――中村元氏訳『ブッダのことば』解説2009年01月09日

 中村元氏・紀野一義氏訳註『般若心経・金剛般若経』(岩波文庫)を読んでいる。中村元氏による日本語訳と解説(註)はとても分かりやすい。これを読んでいるうちに、仏典の翻訳というものがどのように行われてきたのか、気になりだした。

 仏教の経典は仏教の開祖であるゴーダマ・ブッダ(釈尊)が弟子に話して聞かせた内容を死後に記録したものである。ブッダは生前教えを文字に記すことを許さなかったといい、そのため、経典は暗記で保持され、ブッダの死後に弟子達が教えをまとめ、文字化したらしい。

 中村元氏訳の『ブッダのことば』にそのあたりの解説を見つけた。それによれば、ブッダの死後、仏弟子たちは教えの内容を簡潔にまとめ、あるいは韻文の詩の形に表現したという。これは古代マガダ語か、マガダ語の影響の強い俗語であったと推定される。それがある時期パーリ語に書き換えられ、現在ではパーリ語聖典のうちに伝えられている。一方、原始仏教聖典の全てをまとめた三蔵(経蔵、律蔵、論蔵)は、西暦紀元後にもとの俗語からサンスクリットに翻訳され、それがチベット、中国で翻訳されるという経緯を辿ったらしい。
 
 仏典は長い歳月の中で数々の言語による翻訳を経て、サンスクリットになり、そして漢語訳、チベット語訳になったのである。そしてそれが漢語訳を経て、日本へともたらされたわけである。

読んでいる本:中村元氏・紀野一義氏訳註『般若心経・金剛般若経』(岩波文庫、1960)
参考:中村元氏訳『ブッダのことば』(岩波文庫、1984)

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